トップに戻る
シェア

緩和ケア医デビッド・カサレット氏は問いかける:「もし主流の医療機関が、ディスペンサリー(医療用大麻販売店)のように運営されていたら?」

カート・ハーン 25/03/2021 0 comments

米国の緩和ケア医デビッド・カサレット氏は、医療用大麻にまつわる誇大広告や中途半端な真実に飽き飽きしていた中、懐疑的な想いで自らディスペンサリー(医療用大麻販売店)の調査を試みました。そして現代のディスペンサリーから、主流の医療機関が学ぶべきことは何なのか、また医療用大麻が患者の健康をコントロールできること、ディスペンサリーの教育的な雰囲気、医療用大麻の潜在的な健康効果を探るために私たちがすべきことについて、非常に魅力的なレポートとして発表しています。

ある1人の医師が、患者を通して医療用大麻との出会いからディスペンサリーを訪れたことをきっかけに、そこにある真実を素直に受け止め、医師として原点回帰し、現在のヘルスケアの在り方を今一度見つめ直す必要性があることについて、全ては患者のより良い治療体験のために勇気をもって公言する姿に心が揺さぶられました。今から5年前となる2016年のTED Talksですが、これをご覧になった皆さまが、医療用大麻について知ってみようと思うきっかけとなれば幸いです。そして日本のCBD産業が、今後もCBDを必要とされる人々に深く寄り添い、頼もしい存在であり続けて欲しいと願います。ふと、リスボン宣言の序文が心に浮かびました。

リスボン宣言(患者の権利宣言) 出典:「2005年10月 日本医師会訳」(日本医師会 HP)

医師、患者およびより広い意味での社会との関係は、近年著しく変化してきた。医師は、常に自らの良心に従い、また常に患者の最善の利益のために行動すべきであると同時に、それと同等の努力を患者の自立性と正義を保証するために払わねばならない。以下に掲げる宣言は、医師が是認し推進する患者の主要な権利のいくつかを述べたものである。医師および医療従事者、または医療組織は、この権利を認識し、擁護していくうえで共同の責任を担っている。法律、政府の措置、あるいは他のいかなる行政や慣例であろうとも、患者の権利を否定する場合には、医師はこの権利を保証ないし回復させる適切な手段を講じるべきである。

どうか多くの皆さまにご覧いただけますように。

医療用大麻を支持する医師の声 – TED Talksに登壇した緩和ケア医デビッド・カサレット氏が医療用大麻について語る

※ ビデオご視聴の際、画面右下の「吹き出し」アイコンをクリックし、Japaneseを選択すると日本語字幕が表示されます。

NOVEMBER 2016 PALM SPRINGS CALIFORNIA

0:00

緩和ケアの医師として働いてきた年月の中で、最も不甲斐なさを感じた事を皆さんにお話ししたいと思います。それは2-3年前の事でした。私は70代の女性を診るよう紹介されました。彼女は膵臓がんを患った英語学の元教授でした。私が診察したのは、彼女が痛みや吐き気、嘔吐の症状を訴えていたからです。彼女を診察しに行き、これらの症状について話をしました。

問診の最中に、彼女は私に医療大麻は効果があると思うかと尋ねました。私は医学部で学んだ医療大麻についての全てを思い返しました。あまり時間がかからなかったのは、全く何も習っていなかったからです。そこで自分の知る限りの事を話し、医療大麻は少しも役に立たないと答えました。すると彼女は微笑んで頷き、ベッドの隣に置いてあったバッグに手を伸ばし、

1:00

吐き気、嘔吐、不安といった症状に、医療大麻が有用性のある事を示す十数編のランダム化比較実験の論文を引っ張り出しました。彼女はその論文を私に手渡し、こう言いました。

「おそらくご意見を仰る前に、これを読むべきだと思いますよ…先生」

(笑)

そうする事にしました。その夜、全ての論文を読み、更にもう数編見つました。翌朝、彼女を診察した時、大麻には医学的に有用だとする、いくつかの根拠があるようだと認めざるを得ず、もし興味があるのなら、大麻を試してみてはと言いました。すると何と答えたと思います?この73歳の英語学の元教授が?こうです。

「およそ6ヶ月前に試しましたよ。素晴らしかったです。以来 毎日使っています。これまで見つけた薬の中でも最高の物です。こんなに素晴らしい物に出会うまでに何故73年もかかったのかしら」

2:00

(笑)

その瞬間、私は悟りました。医学部で学んだものは、現実と何の関わりも持たないので、医療大麻について学ぶ必要があったのだと−私はより多くの論文を読み、研究者に話を聞き始めました。医師達と話を始め、最も重要な事、 つまり患者の話を聞き始めました。これらの会話を基に本を書き上げました。実際この本は 3つの驚くべにことに基づいています。ともかく、私には驚きでした。

1つ目、既に言及しましたが、実際に医療大麻には、何らかの有用性があるという事です。その有用性は医療大麻の熱心な支持者が言っている程、大きく驚くべきものではないかもしれませんが、確かに効果はあるのです。

驚きの2つ目は、医療大麻には、何らかのリスクがある事です。このリスクは医療大麻の反対者が言っている程、大きく恐ろしいものではないかもしれませんが、確かにリスクは存在するのです。

3:00

3つ目の驚きが、最も大きいのですが…

医療大麻に助けを求めた事のある患者の多くに話を聴いた所では、結局、彼等が医療大麻に向かったのは、その有用性の為でもなければ、リスクと有用性のバランスの為でもなく、又それを特効薬だと思ったからでもなく、自分の病気をコントロール出来るからでした。医療大麻によって患者の健康は生産的で、効率的で有用で、身体に快適な方法で、管理が出来るようになるのです。

それを示す為に、別の患者をご紹介しましょう。

ロビンに会った時、彼女は40代前半でしたが、60代後半にしか見えませんでした。過去20年間、関節リウマチに苦しんでおり、手は関節炎で節くれ立ち、背骨は曲がり、動き回るのに車椅子に頼らなければなりませんでした。衰えて弱々しい様子でした。肉体的にはそうであったかもしれません。しかし感情的、認識的、精神的には、私がこれまで出会った中で、最も強靭な人でした。

4:00

北カリフォルニアにあるディスペンサリーで、彼女の隣に座り、医療大麻を服用するようになった経緯、どんな効き目があったか、薬は役に立ったかを尋ねると、以前私が訊いた患者と同じ事を言い始めました。「薬のお陰で不安は和らぎ、痛みも軽減した。そのお陰で、眠れるようになった。」それらはみな耳にして来た事ですが、それまで一度も聞いた事のない事を、彼女は言ったのです。

「薬のおかげで、自分の人生や健康をコントロール出来るようになった」

彼女は必要な時、効くと思われる量と頻度で、薬を服用していました。もし効果がなかったなら、それを変更してみます。全ては彼女次第でした。最も大切なのは、他の誰の認可も必要ない事だと、彼女は言いました。病院の予約も、医師の処方箋も、薬剤師の指示も要らず、全ては彼女にかかっていました。彼女が管理していたのです。慢性の病気を持った人にとって、それは些細な事のように思えますが、全く違います。

5:00

慢性の深刻な病気に直面すると、それが関節リウマチやSLE、がん、糖尿病、肝硬変であっても、私達にはコントロール出来ません。私が「もし…」ではなく「…の時」と言った事に注目して下さい。

私達は皆、人生のある時点で、自分にはコントロール出来ない、慢性的で深刻な病気に直面するでしょう。身体機能や認知機能は衰え、もはや身の回りの事も出来ず、やりたい事も出来なくなるでしょう。私達の身体が自らを裏切り、その過程で私達は管理が出来なくなるのです。それは怖い事です。ただ怖いだけでなく、驚く程、恐ろしい事です。ぞっとするくらい怖いのです。

緩和ケアの患者と話をすると、その内の多くが、死に至る病に直面し、大いなる恐怖を抱いています。痛み、吐き気、嘔吐、便秘、倦怠感、死が迫る恐怖感等です。しかし他の何よりも、彼らが恐れるのは、ある時点で、明日、又は今から1ヶ月にはきっと、

6:00

自分の健康や生命、そして健康管理が思い通りにならなくなり、他人に頼るようになるという事、それが怖いのです。

だから、今申し上げた診察所で出会ったロビンのような患者が、曲がりなりにもコントロールを徐々に取り戻そうとして医療大麻に走るのは、極めて当然の事なのです。

でもそこでは、何をしているのでしょう?私がロビンと出会ったようなディスペンサリーで、どうやって患者にコントロールを取り戻させることができるのでしょう?少なくとも、ロビンにとって通常の病院や診察所が出来なかったやり方で、何をするのでしょうか?秘訣は何でしょうか?

そこで私は、真相を探る事にしました。

カリフォルニア州ベニスビーチのいかがわしい診察所に行き、私は、自分が医療大麻患者となり、医療大麻を買う事の出来る証明書を手に入れたのです。

7:00

違法に証明書を手にした訳です。だって私は、カリフォルニアの住民ではないし、そう記すべきですね。記録のために申し上げますが、その証明書を麻薬の購入に使った事はありません。

DEA(アメリカ麻薬取締局)の皆さん、よろしく。

(笑)

素晴らしいお仕事ですね、頑張って下さい!

(笑)

しかし、たとえ購入に使わなかったとしても、その証明証は貴重な物です。私が患者になれるんですから。そのお陰で、ロビンのような患者達が、ディスペンサリーに行った時と同じ経験が出来るのです。そこで私が経験した事、毎日ロビンのような何十万の人達のする経験とは、本当にびっくりするものでした。ディスペンサリーまで歩いて行き、そういった診療所や薬局に入った瞬間から、そこは私の為にあったかのような気持ちになりました。

まずは自分が誰なのか、どんな仕事をしているか、医療大麻の処方箋や薬品を探す時、何が目的なのか、何を優先するのか、

8:00

望む事は何なのか、これが私の役に立つかもしれないとどう考えるか、期待するか、何を恐れているのか、といった質問がありました。それはロビンのような患者が、常に問われるような質問です。

それは話し相手が、心底、私のためを思い、私を理解したいと思って問うていると、確信出来る質問です。

これらのディスペンサリーで学んだ2つ目の事は、教育を受けることができることです。

ディスペンサリーの中で働く人達からの教育のみならず、待合室にいる人達からの教育です。

隣に座って私が出会ったのは、ロビンのようなとても幸せそうな人達です。彼等は喜んで自分の事、医療大麻を使う理由、どんな、何の効果があるかを教えてくれて、私にアドバイスと提案をくれます。この待合室は、相互のやりとりやアドバイス、サポート等、本当に活気溢れた場所です。

3つ目は薬剤師(※ディスペンサリーで働くスタッフ即ちバッテンダーを指しています)の人達です。

9:00

如何にこの人達が、時として長時間を費やし、嬉々として、私にこれらの微妙な差異を順序立てて説明したかに驚きました。この薬とあの薬の特徴の違い、喫煙と吸引の違い、食用に適するものと塗り薬の違い−私は買う気など毛頭ないのにです。

あなたが最近、病院や診察所に行った時の事−誰かがそんな事を何時間もかけて、説明してくれた時の事を思い出してください。

ロビンのような患者が、そのようなディスペンサリーへ行き、そのような薬局へ行き、そういった個人的な配慮、教育、サービスを受けているという事実が、医療制度への警鏡となるべきなのです。

ロビンのような人達は、通常の医学に背を向け、ディスペンサリーに向かっています。それはこういったディスペンサリーが、彼らの必要とする物を与えてくれるからです。

これが、既成の医療機関にとっての警鏡だとしても、多くの医師たちには聞こえないし、聞きたくもないものでしょう。

10:00

同僚の医師に、医療大麻の事を話すと、彼等はこう言うのです。

「私達にはもっと多くのエビデンスが必要だ。有用性に対する調査やリスクに関するエビデンスがもっと必要だ」

何と言うべきでしょう?それはもっともです。実にもっともなのです。

実際、医療大麻の有用性に関し、もっと多くのエビデンスが必要です。又、連邦政府に大麻を規制物質法で合法とするよう求め直したり、その研究を可能にする為、取り扱い規定をすっかり変更し、その上、医療大麻のリスクを、更にもっと研究しなければなりません。医療大麻のリスクを

娯楽的使用のリスクは良く知られていますが、医療大麻のリスクについては、殆ど何も知られていません。

そこで本当に、リサーチが必要になって来ます。しかしリサーチは必要だが、今変化を起こす必要はないという主張は、全く的外れです。ロビンのような人達が医療大麻に手を出しているのは、それが特効薬だからでも、全くリスクがないと思っているからでもありません。流通経路や処方や使用されている実際の状況によって、

11:00

生涯に渡って、必要なコントロールが得られるからなのです。このことは、私達が本当に注意を払う必要のある警鏡です。

しかし喜ばしい事に、こんにちディスペンサリーから、学ぶ事の出来る教訓があるのです。それは私達が真に学ばねばならないものです。

ディスペンサリーは、医学訓練を全く受けていない人々による小規模経営である場合もよくあります。10億ドルもかけた医療制度が、不甲斐ないことに、きちんと提供できていない−

支援や患者の求めに対して、これらのディスペンサリーが、応えているのです。

実に忸怩たる思いなのですが、そこから学ぶ事も出来ます。少なくとも3つの教訓が、その小規模なディスペンサリーから学べるのです。

1つ目に、患者がもっと自己コントロールを出来る方法を見つけることは、ささやかでありながらも、重要なことです。

医療提供者と、いつ、どのように接すれば良いか、どのように薬を使用すると患者の役に立つのか、自分自身の診療においては、

12:00

より創造的で柔軟な見方で、患者が薬を安全に使用して、症状と付き合っていけるような考え方を取り入れました。安全は重視しています。

私が処方する薬の多くは、麻薬鎮痛剤や精神安定剤で、過剰摂取すると危険な可能性があります。しかしここが重要です。

それらは過度に使用すると危険もありますが、患者の希望と必要性に合わなければ、薬の効果は期待出来ないのです。もし薬が安全に投与されるのであれば、その柔軟性は患者やその家族にとって、非常に貴重な物となり得るのです。それが1つ目です。

2つ目は教育です。

こういったディスペンサリーから、患者に教育を提供する方法の工夫を学び、医者の時間をあまり、あるいは全く使わないようにする大きな機会があります。私達が使用している薬が、何で、何故使われているのか、その病気や予後や経過予測について再考する機会にもなります。

そして最も重要な事は、患者が互いに学び合う機会です。

そのディスペンサリーの待合室で起きている物事を、

13:00

どうやって私達は再現出来るでしょうか。患者はどうやって互いに学び合い、情報交換をするのでしょうか。

もう1つ大事な事は、ディスペンサリーのように、患者を第一に扱い、患者が希望や要求を胸を張って言えるようにすること、そのために私達医療従事者がいるのです。

患者に希望、恐れ、目標、好みを尋ねるのです。緩和ケアの医師として、私は全ての患者に望んでいる事、恐れている事を聞いてみます。しかしここが重要です。

患者は、死に近づく慢性的で深刻な病状になるまで、待つ必要はありません。誰かに「何を望んでいますか?」「何が怖いですか?」と聞かれるまで、私のような医者にかかるのを待つ必要はありません。

それは医療制度にしっかりと組み込まれるべきです。それは可能です。本当に出来るのです。国中のディスペンサリーや診療所は、この事を理解しています。

14:00

大規模で通常の医療制度は、何年も遅れているのだと、彼等には分かっているのです。しかしそこから学ぶ事は出来るし、学ばねばならないのです。

自らのプライドを脇に置き、少しの間、自分の考えを無視するのです。私達には自らの名前の後ろにたくさんの専門家の肩書があり、大規模な医療制度内で医療提供の責任者であり、患者の要求に応える方法について知るべき事を全て知っているからです。

私達は自らのプライドを脇に置き、ディスペンサリーをいくつか見に行く必要があるのです。

そこで何が行われているのかを理解し、何故ロビンのような多くの患者が通常の医療機関を見限り、代わりにディスペンサリーへ赴くのかを理解しなければなりません。私達は、その秘訣や彼等のツールが何なのかを理解する必要があり、そこから学ばなければなりません。

それを学べば

学ぶことが出来るし、断固学ぶべきだと思いますが

全ての患者さんが、きっと、より良い治療を体験できるのです。

ありがとうございました。

(拍手)

デビッド・カサレット氏について

カサレット氏はデューク大学医学部の教授であり、デューク医療システムの緩和ケア部門のチーフを務め、これまでに100以上のジャーナル記事、多数の雑誌記事を執筆しています。『Shocked: A Doctor Investigates the Blurred Lines Between Life and Death』『Murder at the House of Rooster Happiness (Ethical Chiang Mai Detective Agency)』『The Missing Guests of the Magic Grove Hotel (Ethical Chiang Mai Detective Agency)』

MM411 APAC 統括責任者。日本のカンナビノイド医学教育発展のため尽力する。アジア全域のグローバル日本企業への人材及び組織開発の教育研修設計に従事。また名門ベンチャーキャピタル投資顧問会社セコイアキャピタル日本顧問、日経機関投資家アンケートトップ業界アナリスト入賞。CNN出演。早稲田大学・スタンフォード大学ビジネススクール

jaJapanese